阿部 政孝 ゼミナール

研究課題

人間科学専門ゼミナールⅠ
「犯罪・非行の分析とその理解Ⅰ」
人間科学専門ゼミナールⅡ
「犯罪・非行の分析とその理解Ⅱ」

研究内容

人間科学専門ゼミナールⅠ

 犯罪や非行の背景には様々な要因が重層的に関与しています。しかし、私たちが通常知りうる情報はマスコミの報道によるものに限られ、その動機・原因についても、どこに着眼し重点を置いて報道がなされるのかによって、私たちの印象や受け止め方はまったく異なったものになります。
 ゼミナールⅠでは、犯罪や非行に対する私たちの認識がマスコミ等のフィルターよる影響を受けやすいものであることへの気付きや自覚を出発点とし、犯罪や非行を心理学や社会学の視点から理論的に分析・検討し理解するための枠組みを構築することをねらいとして展開します。ゼミナールの進め方は、前期では犯罪・非行のメカニズムを理解するために必要な基礎理論の習得を目的に文献の輪読を行う予定です。後期は、犯罪・非行の解明に焦点を当て、過去に発生した重大犯罪に対する犯罪心理学の立場等からのアプローチに検討を加えるとともに、少年非行の想定事例に向き合い、事例分析・検討の手順や方法を体験的に学習してもらいます。

人間科学専門ゼミナール Ⅱ

 ゼミナールⅡではⅠで構築した犯罪や非行を理解するための枠組みを応用して、事例研究を行います。事例研究の過程では、理論的な分析・検討を行うだけでなく、行為主体である本人にとって犯罪・非行がどのような意味を持つものであったのか、そしてその行動が被害者や自身の家族を含む周囲の人々にどのような作用を及ぼしたのか、立ち直るための手掛かりはあるのか、などについて討議を行い、事例に寄り添い人間理解を深める視点から考察を進めます。
 また、事例研究と並行してゼミ生の問題意識や関心を類型化して少人数のグループを構成し、後期には、同様の問題意識に沿って展開されている卒業研究や先行研究の内容に触れてもらい、その結果を取りまとめ、卒業研究への道筋を付けられるようにしたいと考えています。
 なお、ゼミナールⅡはゼミナールⅠでの学習によって習得した知識や経験をベースにゼミ生主導で展開することになります。

指導方針

  1. ゼミナールⅠでは文献の輪読や想定事例の分析・検討を行う過程で、ゼミ生各人の関心や注目がどこに向けられるか、そしてそれはなぜかという問いかけを繰り返し行い、自身の問題意識を明確にできるよう方向付けます。
  2. 犯罪・非行を理解するためには、系統立て論理的に思考を展開する力と仮説検証的なアプローチが必要です。ゼミナールⅠ及びゼミナールⅡでは、発表やレポートの提出を求めますが、論拠を踏まえた思考や記述を行うことを主眼として指導・添削を行います。 また、再犯・再非行の防止に向けた取組みへの理解を深める一助として、刑務所や少年院等の矯正施設への見学等を考えています。
  3. ゼミナールⅡでは事例を読み解くセンスや発想の豊かさ(想像力)、テーマに適合した先行研究を選定し、共同して取りまとめを行う力などが問われます。ゼミ生にはこれらのセンスや力量を向上させるための自己研さんが必須となりますが、各人の主体的な取組と努力を重んじながら討議や共同研究をサポートします。

教員より新ゼミ生へ一言

 私は集団が個人の認識や行動に及ぼす作用を研究する中で犯罪や非行に関心を抱くようになりました。犯罪・非行という現象は実に奥深いもので、無差別殺人に及んだ犯人や常習的に窃盗をくり返す高齢受刑者など、数多くの犯罪者や非行少年と接してきましたが、その根底には思いもよらぬ人間の心模様が横たわっていたり、一見何の関連もなさそうな社会事象が影響していたりもします。犯罪や非行の探求を通して、ゼミ生の皆さんがさまざまな気付きや新たな発見をし、感性を磨くことにより、自分なりの成長の手応えを感じ取ってもらえればと思っています。

選考方法

 ゼミナールⅠについては、志望理由書とオンライン面接(詳細未定)による選考を行います。ゼミナールⅡについては、現ゼミナールⅠの持ち上がりとなりますので留意願います。