間山 広朗 ゼミナール

研究課題

人間科学専門ゼミナールⅠ・Ⅱ
「教育社会学研究」

研究内容

1.「教育」に対する怒り(!)と疑問(?)

 このゼミでは、教育現象について腹立たしいこと(!)、あるいは不思議なこと(?)に関心のある方を求めます。まず、「教育社会学」とは、教育についての学問、つまり教育学のひとつです。そして教育学といえば、「より良く教育するための技術・方法」のようなものをイメージされるかもしれません。しかし、教育社会学はおそらく少し、あるいはかなり、そのイメージとは異なります。
 皆さんの多くは毎日学校に通えてきたかと思います。当たり前に思われるかもしれませんが、学習面でも生活面でも、学校教育の「勝ち組」かもしれません。しかし、そもそも学校とはそんなに素晴らしい、あるいは正しい所でしたか? 在学中に対象化することはなかったかもしれませんが、大学進学後、あらためて小・中・高をふり返るといかがですか? 「より良い」とは何を基準に考えるべきですか?
 段落替えで考えてくれたならば、!マークに思い当たる方(腹が立つ!)、あるいは、素晴らしく美しい記憶を残してくれた先生の力とは何だったのだろう?(不思議だ)と思う方、さらには「!」と「?」が共存する方など様々な関心があり得るでしょう。言い換えれば、教育、なかでも学校教育に対する批判的関心を持つ方を歓迎したいと思いますし、実は学校教員を目指す方にとっても批判的関心は非常に重要です。
 教育学は哲学・歴史学・心理学等の理論・方法を用いながら教育現象を考える学問ですが、教育社会学は、教育学の一領域でありながら社会学を行う学問です。社会学の調査は量的な統計と質的な分析とに二分できますが、このゼミでは主に後者を探究しようとしています。その理由は、教育に対して腹立たしい思い(!)を募らせて来た方、不思議に思う気持ち(?)を募らせて来た方の双方に、統計的な数字に変換して「客観的」な科学を行うのとは別のやり方で、「!」や「?」の感覚をそのままにぶつけて欲しいからです。そうした学問を実現させるための手法として、質的な分析が向いているのです。

2.研究テーマと基本姿勢

 テーマは多様です。多様すぎるくらい多様にあり得るのですが、具体的なテーマとしてイメージをもってもらうには、①教育問題の研究や、②教育実践の研究をあげることができます。学校教育でいえば、例えば①は、いじめ・不登校・学力格差…などをあげることができるでしょう。②は、学校授業や生徒指導領域の研究をあげることができます。また、学校教育を超え出る現象、例えば幼児の発達や成人の逸脱現象も守備範囲です。「自己」「他者」「感情」「趣味」「流行」「メディア」、そして「人生」までも、教育社会学は研究してきました。人間の「成長」や「逸脱」、さらに広く取れば人間の「変化」について、教育社会学は多様な広がりを有してきました。
 もちろん、社会学的な視点・方法を基盤に据えつつですが、ゼミ生個々人が探求し、ゼミ論や卒論にするテーマは実に多様であり得ます。ただし、教育を中心とした社会現象を、冷静に、でも単にシニカルに笑うだけでなく根っこの部分では(例えば自分を含め誰かのためになるように)熱く・厚く考える。そういった姿勢を求めていきたいと思いますし、そうすることでこの学問の魅力が高まります。

3.具体的なゼミ活動

 まずは教育学や社会学、そして関連する領域を学ぶための基礎体力をつけるために、様々な文献を読んでいきます。新書や文庫を中心に読み進めながら、時には学術論文も読みたいと思います。ただし、後述するように「読み方」も重要ですので、ディスカッションを重視したいと思います。ゼミ1・ゼミ2・卒論を経たときには、「以前の自分ではない」と思えるような3年間を過ごしてもらうために、毎週のゼミ活動や授業時間外での活動を過ごして欲しいと思っています。具体的には以下で書きます。

指導方針

1.ゼミ活動の姿勢と授業時間外活動

ゼミ活動の基本は、文献購読とディスカッション、そして、その先にある論文執筆が中心です。ゼミ参加の姿勢としては、①知識の量よりも知識の質を高めることを求めます。知識の質とは、何らかの知識を単に知っているというよりは、それを何らかの問題関心に応用して、自分の問題関心を膨らませるために「使用する」姿勢を求めます。そして、そのためにゼミ活動で、②協働して議論していく姿勢を求めます。③文献を読んでくるのは前提です。

2.授業時間外の活動について

授業時間外には、合宿(夏を中心に必要に応じて春や冬など)への参加を求めます。また、まずは異学年・他のゼミ、さらには他大学の学生との交流を大事にしていきたいと思います。ゼミ2や卒論ゼミでは下級生の指導を通じて、自らを高めて欲しいと思います。

3.卒業論文の執筆について

必修としての卒業研究において、このゼミでは20,000字以上の卒業論文の執筆を必須とします。おそらく4年次にはこの目安ではとても足りないくらいの文章が書けるようになっているはずです(そのために、ゼミ1・ゼミ2終了時のゼミ論文も必須とします)。一定以上長文の文章を書くという営みは、以下で述べるような卒業後の進路に就くならば非常に重要です。ある意味で人間が変わります。

4.卒業後の進路のイメージについて

以下に囚われる必要はありませんが、ゼミ1選択時に提示する進路として、以下をご紹介しておきます。

  1. 学校教員:中・高等学校教員に加え、小学校教員(免許取得の方法は相談に乗れます)。
  2. 教育関係:学校以外にも教育機関はいっぱいあります。
  3. 教育関係の出版業界:教科書だけでなく教育関係の書籍を企画・編集・出版する仕事です。
  4. 教育学研究者:他大学を含め、大学院進学、そして大学教員について相談に乗れます。
  5. その他:上記以外にもゼミ活動を活かせる進路はあります。

教員より新ゼミ生へ一言

 教員志望の方、そうでない方。学校教育に希望を見出す方、批判する方。いずれも歓迎します。

選考方法

上記のゼミ内容を希望する方を、志望動機に関する文章と面接によって選考します。