瀬戸 正弘 ゼミナール

研究課題

人間科学専門ゼミナールⅠ
「臨床心理学とその研究を理解しよう!」
人間科学専門ゼミナールⅡ
「実際に研究を行ってゼミ誌を作ろう!」

研究内容

人間科学専門ゼミナールⅠ ・Ⅱ

 このゼミナール(ゼミⅠ・Ⅱ)では、2年間を通じて、①臨床心理学・健康心理学に関連するさまざまな事柄のメカニズムを科学的・実証的に解明すること(研究を実施すること)を目標として活動します。研究テーマの設定は自主性を尊重しますが、参考までに紹介すると、私(とゼミ生・大学院生)がこれまで実施してきた主要な研究テーマは、以下の6つです。なお、「ゼミⅠ」と「ゼミⅡ」は、連続して受講することが原則となります。

  1. ストレスのメカニズムあるいはストレスマネジメントに関する研究
    複雑で時間に追われる現代社会で生活する私たちは、軽度のものから重度のものまでさまざまなストレス関連の症状(たとえば、軽いイライラや落ち込み、神経症、心身症など)に悩まされています。ストレスのメカニズムや治療・対処原理の解明に資するために、実証的調査研究や介入研究などを幅広く行ってきました。例えば、中学生の不適応行動(不登校、いじめ、キレた行動など)には多かれ少なかれストレスが関連しているという仮説のもとに、それら不適応行動の予防を目的として、ストレスマネジメントの授業と自律訓練法を中心とした介入研究を中学校で実施し、効果的なプログラムのあり方について検討しました。
  2. 認知行動療法に関する研究
    臨床心理学の分野では、医学や薬学にならって、「Evidence based」という発想が重要視されるようになってきました。つまり、心理療法やカウンセリング(心理臨床実践)は、研究によって明らかになったEvidence(エビデンス、それが有効であるという証拠)に基づいて実践されるべきであるという考えです。とりわけ、認知行動療法(認知行動カウンセリング)はこの発想を重視しています。これまでに、大学生が抱える問題に対して効果的なカウンセリングを実践できるよう、問題行動や症状に関連するさまざまな物事の受け止め方・思考パターン(すなわち認知)を明らかにする実証的基礎研究、そしてそれら認知の偏り(認知の歪み)を測定する尺度の開発に取り組みました。
  3. 心理尺度(テスト)の作成に関する研究
    臨床心理学では、古くから心理アセスメント技法や心理尺度の作成を重要な仕事としてきましたが、絶えず変化する社会の要請に応えて現在でもさまざまな心理尺度の開発・改良が行われています。最近では、女子大学生用不合理な信念測定尺度、喫煙動機評価尺度、乳がん患者ソーシャル・サポート測定尺度、中学生用こころの居場所測定尺度、中学生用コミュニケーション態度測定尺度、摂食障害スクリーニング尺度などの開発を行いました。興味がある人は、私の研究室に見に来てください。
  4. 子ども(幼児期から青年期までを含む)の問題行動に関する研究
    不登校・登校しぶり、引きこもり、シャイネスなど子どものさまざまな問題行動に関して、社会的スキル、コミュニケーション態度、心の居場所、支援制度のあり方、その他さまざまな側面から調査研究や面接研究を実施して、子どもの問題行動の理解と支援に役立つ実証的知見を蓄え ています。
  5. 禁煙プログラムの開発
    近年、喫煙が社会的な問題として取り上げられることが多く、禁煙の支援、効果的な禁煙プログラムの作成は社会的要請が高まっています。喫煙者はタバコに対して身体的依存とともに心理的依存を示すことがいろいろな研究で報告されていることを鑑みると、健康心理学の知見や臨床心理学的アプローチ(たとえば、認知行動療法や自律訓練法)が貢献できる余地は高いと思われます。例えば、研究助成を受けて、喫煙動機の測定及びセルフモニタリング法とリラクゼーション技法(自律訓練法)の活用を中心とした禁煙プログラムのあり方を検討する研究を行いました。
  6. 障害や喪失体験の受容過程に関する研究
    これまでに、乳がん患者や低出生体重児を出産した親に対する支援のあり方に関する研究を実施しました。

指導方針

 ゼミⅠでは、①「カウンセリング研究」、「心理学研究」、「認知行動療法研究」、「健康心理学研究」などの学術雑誌に掲載されている臨床心理学・健康心理学関連論文を分担して読解し、発表・討論することによって、研究と論文(ゼミ誌)作成のために必要な知識の習得・準備作業を進めます。また、②文献検索の方法、研究法、心理統計法、パソコン・統計ソフトの使用法など研究や論文作成のために必要な知識と技術を体験的に学びます。①と②を通して、研究テーマの決定、研究方法や論文執筆法の習得などを目標とします。さらに、研究成果を心理臨床実践につなげるイメージを持つために、ストレスマネジメントやカウンセリングの技法(たとえば、自律訓練法)を実際に体験したり、先輩や現場で働いている人の話を聞く機会を設けたりする予定です。
 ゼミⅡでは、班(グループ)を作って実際に研究を進め、経過報告を行い(夏合宿も実施予定)、研究指導を受け、最終的に研究成果をゼミ誌等にまとめます。

教員より新ゼミ生へ一言

 臨床心理学の研究は論文(ゼミ誌)を完成したら終わりではありません。研究成果を実際に自分や他者のこころとからだの健康に役立てる、臨床実践に生かすという視点が大切です。そのため、ゼミ生のみなさんの学習意欲や目標は高いものになるようです。これまでに、多くのゼミ生は研究成果に納得して卒業し社会に出て行きましたが、さらに高度な専門性や資格(例えば臨床心理士や公認心理師)を身につけて心理臨床実践を仕事にしたいゼミ生は、大学院へ進学しました。

選考方法

 まずは説明会を行い、志望者多数の場合は何らかの選考を行います。