川嶋 伸佳 ゼミナール

研究課題

人間科学専門ゼミナールⅠ
「現代社会と社会心理学Ⅰ」
人間科学専門ゼミナールⅡ
「現代社会と社会心理学Ⅱ」

研究内容

 本ゼミでは、社会心理学的な視点から現代社会の諸問題を分析し、その解決策を考えます。教員自身は、格差と不平等、社会的公正、メディアの影響、日本人の態度や信念などに関する研究をしています。もちろん、現代社会にはここに挙げた以外にも様々な問題が存在します。例えば、少子高齢化、文化間葛藤、偏見や差別などは重要なテーマでしょう。また、社会は常に変化していますので、若い皆さんの視点からより興味深く重大な課題もあると思います。ですので、最終的な卒業研究では、ここで挙げたものに限らず、基本的にはメンバー個々の興味に応じた研究を行ってもらいます。

 ただし、どのような問題に取り組む場合であれ社会心理学的なアプローチを前提とします。本ゼミでは特に、次の2点を重視します。第1は、人々の行動を個々人の心の働きと、それを取り巻く社会(環境、文化、制度など)との相互作用関係からとらえるということです。例えば、選挙に行かない若者は「自分が投票したところで社会は変わらない」という無力感を抱いているかもしれません。そのような無力感を持つ人が多くなると、若者の投票率が低下し、若者の声は「実際に」政治に反映されなくなります。そして、そのような現実を目にした若者はますます無力感を強めることが予想されます。多くの場合、社会と心はこのような相互作用関係にあるため、これらの両面を考慮することで問題をより正確に捉えることが可能となります。

 第2は、データに基づいて主張をすることです。データをとる方法は、主に質問紙調査と実験です。質問紙調査とは、一般的にはアンケートと呼ばれる手法のことで、聞きたいことがらを研究者が事前に整理し、それらを文章によって尋ねます。従来は紙に印刷をしたものが一般的でしたが、近年はWEBを用いた調査が急速に普及しています。また実験とは、ある結果(態度や行動)の原因であると予想される要因(状況や刺激)の有無や強弱を研究者自身が操作し、実験参加者の反応を測定する手法です。これらを通して得られたデータを客観的に分析することで、自らの主張を裏付けることを目指します。

 ゼミナールⅠでは、このような社会心理学的な考え方と手法を学ぶために、まずは専門的な文献を読み、各自が理解した内容についての発表を行ってもらいます。どのような問題に対して、どのように仮説が立てられるのか、またその仮説がどのような手法で、どのように検証されるのか、個々のメンバーが研究のイメージをつかむことが目的です。これに加えて、グループに分かれたうえで実際に研究を行います。ここでは、問いと仮説の設定、仮説を検証するための研究計画の立案、調査または実験の実施、データの分析、および研究成果の報告を行います。

 ゼミナールⅡでは、テーマを個別に設定し、卒業研究に向けた準備に取り掛かります。ゼミナールⅠで実施したグループ研究の流れを一人一人が実践します。まずは各自が文献を読み、問いと仮説の設定、および調査や実験の計画(場合によっては実行)をしてもらいます。ゼミでは毎回発表者を決め、進捗を確認するとともに、ディスカッションを通じて研究を深めます。

指導方針

  1. 現代の社会問題に対する興味・関心
     研究の対象は、たった今社会で、皆さんの身近で起こっている問題です。重要な問題については随時ゼミ内で取り上げ、全員で議論することで、関心の幅を拡げる機会を設けます。メンバーも常に情報にアンテナを張り、自分なりに考える姿勢を求めます。
  2. 関連科目との連動
     ゼミ内での指導は、考えるための方法に重点を置きます。一方で、考えるための材料(知識)を伝える時間は必ずしも十分にとることができませんので、それらについては積極的に他の科目を受講し、身につけてください。特に、社会心理学、社会調査法、統計等の授業はできるだけ受講してください。
  3. 出席と議論
     ゼミの最も重要な部分は、教員およびメンバーが垣根なく行う議論です。当然、毎回出席が前提です。積極的に発言することはもちろん、物事を批判的に捉える姿勢、相手の質問に的確に答える能力、異なる意見を受け入れる態度などを養ってほしいと考えます。
  4. 授業外での活動
     ゼミのほとんどの部分は、メンバーが準備してきた内容に基づいて進行します。一人一人が自主性と責任感を持って課題に取り組む必要があります。
  5. 数字や統計データへの注目
     社会の現状を理解したり、取得したデータから何か主張したりする際、統計的に分析する能力が必要とされます。必ずしも高度な統計技術を身につける必要はありませんが、それらに対する最低限の理解、もしくは理解しようとする努力(あるいは忍耐力)を求めます。

教員より新ゼミ生へ一言

 社会心理学の考え方と知識は、世の中の出来事や皆さんがこれから直面するであろう様々な課題を客観的に分析する際に大いに役立つと思っています。常識や思い込みにとらわれない議論を一緒に楽しみましょう。

選考方法

志望理由書に基づいて選考します。必要に応じて面談を行う可能性があります。