神奈川大学 人間科学部 人間科学科 スポーツ健康コース ゼミ紹介

渡部 かなえ ゼミナール
(健康教育学、子ども環境学、動作学)

Festina lente:
ゆっくり急げ(ラテン語の格言)

主な研究テーマについて教えてください。

子ども・健康・自然体験活動がゼミの研究の3領域です。研究テーマとなる問題(Question)には、特定の領域の深いところにあるものも、複数の領域に広くまたがっているものもあります。それらを、フィールドワークや、数値ではとらえきれない問題の分析に適した質的研究法を用いて、アクション・リサーチの手法で検証していきます。子ども学研究の主なフィールドは、産学連携協定を結んでいる幼児教育施設(保育所)です。健康学の主な研究フィールドは、ゼミ指導教員(渡部かなえ)が健康・スポーツ推進のための審議会の委員を務めている鎌倉市などです。自然体験活動は、葉山海岸で現地NPO法人と協力して教育研究を実践します。また日本だけでなく、ゼミ指導教員がそれそれ1年間の研究生活を送ったスウェーデンとニュージーランドも研究対象です。

指導方針について教えてください。

高校までの学校教育では与えられた問題を机上や画面上で解くことで学習成果が測られますが、現実の社会では「そもそも何が問題なのか」を把握しなければ問題解決に踏み出すことができませんし、問題は紙の上や画面(バーチャル)ではなく「現実社会という現場(フィールド)」で起こっています。このゼミでは、フィールドで問題発見・問題提起ができる力、その問題にアプローチする方法を選択できる力、多角的に検証できる力、導き出した結論(提言)を現場に還元できる実践力を、ゼミI、ゼミIIと段階的に身につけていきます。そして学びの集大成として卒業研究に取り組みます。卒業研究は卒業論文として研究成果を発表しますが、テーマによっては卒業制作(制作ノートを必ず作成し提出します)で成果発表を行います。

他のゼミにはない特徴を教えてください。

スウェーデンやニュージーランドで常識となっている多様性の尊重と「競争ではなく協力」を大切にしています。所属コースも様々で多様な価値観を持つ個性豊かな学生たちが様々な視点から意見を述べることでディスカッションが深まり、真の問題発見や新たな解決法がみつかります。また実際の社会は、競争して相手を蹴落とすよりも、協力していくことで自分にとっても相手にとっても「良かったね」といえるWin・Winの結果を得ることができ、それがさらに次の協力や発展につながっていくことの方がずっと多いです。そして協力関係を築き深めていくためには、他者に伝える力・他者を理解する力が必要で、それらを高めていくために、グループワークやプレゼンテーションをゼミIから行います。フィールドワークでは海や保育所などに行き、現場で子どもたちや活動の指導・支援をしている専門職の方たちと交流し、体験を通した学びを行います。

神奈川大学を受験する高校生や在学生へメッセージをお願いします。

2本で1対の遺伝子にはAA、Aa、aA、aaの組合せがあります。ある遺伝子がAAの人は健康ですがマラリアに感染すると死亡し、aaは感染症に耐性がありますが重い障害を持ちます。Aa・aAは感染症に耐性があり障害はありません。障害を引き受けた1/4の人がいなければ感染症に強く障害もない人は存在しません。あなたに与えられたかもしれない病因遺伝子を受け取って生まれた人がいるのです。弱者なくしては強者は生まれません。皆さんの強点は皆さん自身の努力によるものですが、背後には弱点を引き受けてくれた誰かがいるし、皆さんの弱点は他の誰かに光を与えています。Festina lenteとは、「良い結果に至るにはゆっくり行くのが良い」と「歩みが遅すぎると求める結果は得られない」という両方の意味を同時に表しています。強者と弱者が、強みも弱みも持つ人同士が支え合う社会で、ゆっくり急いで学びを深めていきましょう。